記念日の抜け殻
ずっと大切にしていた記念日。
来ることが当たり前で、近づけば近づくほど良い予感が止まらなくなる特別な日。
けれど、普通の日に戻る瞬間があった。
早く来いと待ち望む気持ちが一気にしぼみ、行き場を無くした期待が恨みになったり、ならなかったり。
早く過ぎ去れ。他の364日と同じく、音もなく流れてしまえ。理性ではそう強がるけれど、思い出が鳴らす「今年も来たよ」の合図。懐かしみたい訳じゃない。それほど大切だった証拠。
今年もその日は来る。普通の日の顔をして。そして過ぎゆく瞬間のその横顔は、「言うほど悪くなかっただろ」とでも言いたげな雰囲気。「楽しい思い出を沢山残してきたよな。今はどうあれ、その事実は認めてくれてもいいじゃん」と、拗ねる余裕すらある。
わかった。白状する。普通の日には戻せない。
記念日ではないかもしれない。でも、たくさんの日々が今の私を支えているという気づきに変わったんだ。後悔や未練じゃない。感謝してるよ。これでもね。
また新たな記念日を迎える日があれば、きっと伝えるでしょう。
「ようこそ私の人生へ。楽しい思い出たくさん作ろうね。このご縁を大切に育みながら」